松島水族館88年の歴史に幕 最終日に1万人、涙と笑顔で最後の思い出

来館者を見送る西条社長らに花束が渡されると、大きな拍手で包まれた

来館者を見送る西条社長らに花束が渡されると、大きな拍手で包まれた

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 マリンピア松島水族館(松島町)が5月10日、地元住民や大勢のファンに見守られながら88年の歴史に幕を下ろした。

閉館を惜しむ人であふれんばかりの館内

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 1927(昭和2)年4月に開業し、同じ場所で営業する水族館としては国内最古だった同館だが、施設の老朽化などを理由に閉館することになった。運営する仙台急行(仙台市青葉区昭和町)の西條直彦社長は「たくさんの声を掛けていただき、地元のお客さまに支えてもらった施設なんだなとあらためて実感した。親子3代・4代にわたって、家族連れで楽しい思い出をつくった皆さまが本当に多い。こんなちっぽけなオンボロ水族館に、それでもここがいいと言ってくれたお客さまに感謝の気持ちでいっぱい」と話した。

 存続を望む声が県内外から寄せられたが、特別名勝である松島には建築上のさまざまな規制があり、同所でのリニューアルがかなわなかったことも明かした。「創業者に対して、自分の代で閉館せざるを得なかったのは本当に申し訳ない」。今後は7月に開業する「仙台うみの杜水族館」と業務委託を結び、飼育する魚類や動物を移動し、飼育業務の管理を行う。

 当日は開館前から入場口に長い行列ができた。「最後まで普通に営業して、動物たちとスタッフ全員でお客さまをおもてなししたい」と、営業時間延長以外は特別なイベントを実施せず、いつもと同じように笑顔で出迎えた。端から端まで目に焼き付けるように展示を見る人、お気に入りの動物に声を掛けて再会を約束する人、動物やスタッフと記念撮影をする人、初めてグッズを購入したという人、来館者はそれぞれ最後の思い出をつくっていた。

 閉館時には館長をはじめとするスタッフが一列に並び、ハイタッチや握手で見送った。常連の来館者や近隣の住民、自分の家族などからねぎらいの言葉を掛けられるとスタッフは涙を流し、「本当に閉まっちゃうんだ」と漏らす声も聞こえた。

 それでも最後まで笑顔で送り終え、来館者と一緒にカウントダウンすると、松島湾に花火が打ち上がった。魚やイカ、タコなどをかたどった100発が夜空を彩り、1969(昭和44)年の集計開始から延べ2100万人以上をもてなした小さな水族館はその役目を終えた。

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