阿部勘酒造(塩釜市)が主力ブランドを「阿部勘」から「塩竈 阿部勘」に刷新し、酒質設計やデザインを全面的に見直した新シリーズ「潮」の出荷を5月から始めた。
1716年創業で、300年以上にわたり塩釜で酒造りを続ける同社。社長の阿部昌弘さんは「日本酒そのものの品質競争だけでなく、どこの土地で、どのような文化の中で生まれた酒なのかという背景まで含めて伝える重要性を強く感じるようになった」と話す。「塩釜はすしや魚介の鮮度を重視する食文化が根付いており、過度な味付けや演出をせず、素材そのものを生かす考え方がある。その価値観が私たちの酒造りの原点」とし、塩釜の食文化や空気感まで含めて伝わる日本酒ブランドを目指したという。
「潮」シリーズ商品は定番4種類を用意する。最高峰の「黄金潮(おうごんしお)」は華やかな香りと磨き抜いた甘み、軽やかな後口が特徴。原料米は山田錦、精米歩合は40%。「橙潮(とうちょう)」は滑らかな口当たりとまろやかな余韻を持ち、日本料理との調和を追求した。原料米は亀の尾、精米歩合は55%。「玄潮(げんちょう)」は繊細な香りとピュアな甘み、爽やかな切れ味で料理の素材の味を引き立てる。精米歩合は55%。「翠潮(すいちょう)」は穏やかな香りとうまみを軸にした食中酒で、後口のシャープな切れが特徴。精米歩合は非公開。
魚介料理との調和をより高い次元で表現するため、こうじ歩合や発酵設計、日本酒度の考え方などを見直し、それぞれの個性を再設計したという。「高級感や派手さを演出するよりも、塩釜の港町らしい静かな美しさや、日常の食に寄り添う感覚を大切にした」と阿部さん。デザインも余白を生かしたミニマルな表現に変更し、720ミリリットル商品にはプリント瓶を採用。英語表記も加えた。
季節限定酒も順次刷新していく。5月26日に出荷を始めた夏季限定酒「夏の潮」は、柔らかなうまみと余韻に感じる心地よい苦みが特徴で、夏の魚介類やわさび、香味野菜との相性を意識した。精米歩合は55%。ラベルには、塩釜ゆかりのアーティスト小田佑二さんが描き下ろした塩釜の海や「塩竈港まつり」の花火、金魚をモチーフにしたイラストが描かれている。
阿部さんは「今回のリブランディングを通して、日本酒単体ではなく、塩釜の海やすし、港町の空気感まで一緒に感じてもらえたら」と話す。