特集

着実な進化を遂げる仙台のヒップホップユニット「GAGLE」
満を持してリリースする移籍第1弾アルバムの手応えは!?

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 GAGLEはHUNGER(MC)、DJ MITSU THE BEATS(ビートメーカー兼サイドMC)、DJ Mu-R(DJ)の3人からなるヒップホップグループ。1996年に結成し、2001年「BUST THE FACTS」でデビュー。全国に活動を拡大する一方、2006年に行われた「仙台市芸術祭」への参加や地域のテレビ・ラジオ番組、市内のクラブイベント出演など地元での活動も着実に続け認知度を高めてきた。

 そんなGAGLEがフルアルバムとしては2年3カ月ぶりにリリースする同作。アルバム名が示す「ゆっくりと着実に」という意味通り、「地に足の着いた活動を続けてきた、彼ららしい意気込みが伝わってくるアルバム」(同レーベル広報)になっているという。

 アルバム発売に先駆け、7月22日にはアップルストア仙台一番町(仙台市青葉区一番町3、TEL 022-722-3001)でインストアライブを開催。10代~30代と幅広いファンが詰めかけた店内で約30分のライブを行い、ニューアルバムに収録された「Love Note(Seoul City Remix)」も披露した。同曲はiTunes Storeで同日から先行配信されている。

 今回、仙台経済新聞ではインストアライブ直後のメンバー3人にインタビューを行い、制作途中のアルバム「Slow But Steady」の内容と仙台のクラブシーンについての思いを聞いた。

■「GAGLE」のまま受け入れてもらえるアルバム

――制作に着手されたのはいつ頃ですか?

HUNGER デモテープ作りはもう日常的な行為なので、前のアルバムが出たあとすぐまた曲作りは始めていました。アルバムを出しますよ、と決めてレコーディングに入ったのは7月に入ってから。だから本当に最近のことです。曲自体はたくさんできていたんですけどね。

MITSU THE BEATS 実際、手を加えられるというのはあと2週間くらいしかないんです。だからそれぞれのスケジュールの隙間をぬってやるというか、さっき(インストアライブ前)もメンバーの予定を付け合わせて、じゃあこの日はどこで何時間やるとか決めて。それ以外にもそれぞれDJをやったりレコーディングしたりミックスしたりとバラバラに動いて、とにかく今は詰め詰めでやってる真っ最中。こんなに短期間で詰めて作るのは始めてです(笑)。

――今回のアルバム作りはどのように進めているのでしょうか。

MITSU THE BEATS 今回は3人それぞれの役割分担をはっきりさせて、一方でそれぞれの領域が交わる部分では意見を言い合ったりしている。いつもなら制作の終盤の方でMu-Rに渡してスクラッチを入れてもらったりするんですが、今回は僕が作ったものにほかの2人が「もうちょっとこういうのどう?」とか、先にスクラッチをアイデアで入れたりとかしながら作りました。そのおかげで、重なる部分がすごく増えたなというところです。

Mu-R これまでいろいろとレコーディングしてきた中で、こういうやり方がいいなということになってきたんでしょうね。

――現時点で、どんなアルバムになりそうだと感じていますか。

HUNGER 自分たちの出せるものが、ずいぶんレベルアップしているなっていう実感がありますね。前ももちろん自信はあったんだけど、今回のほうが全然いいし、多くの人にも受け入れられるようなアルバムになっているなと。

Mu-R この「GAGLE」のまま、素直に受け入れてもらえそうな予感がしています。

MITSU THE BEATS 僕らの一番難しいところですよね。簡単にタガをはずして、もっとわかりやすい歌をやればできる。まあ実際にはそういう音楽を作るのも当然難しいんですけれども、こういう風にすれば理解してもらいやすいだろうなというのはあって。そうじゃなく、いかにこれまでやってきたことを崩さずに、理解してもらえるかというのはいつも考えるところなんだけど、今回はその「うまくいけそうな道」を見つけられたと思っています。

――リスナーにはどのように聴いてもらいたいと思いますか。

HUNGER 同年代に向けて、みんな同じような気持ちを持ってやってるぜっていう素直な気持ちを出しているので、それが伝わればいいな。若い子たちに対しても無理に目線を落として合わせようとするんじゃなくて、やっていることがなんかかっこいいなと思ってくれる若い子がいてくれたらうれしいなと思ってます。

MITSU THE BEATS 反応がちょっと楽しみですね。メインとなる部分はまだ完成していないのではっきりは見えないですけど、感触としてこれはいいぞと。

HUNGER あとちょっと変化があったのが、今回は女性が聞けるアルバムだと思う。GAGLEを聴いてくれている人って7割以上が男性なんですよね。それは、男が物事を深く追求する時ってちょっと視野が狭くなるというか、やっぱり入り込みづらいような雰囲気を醸してしまうじゃないですか。何の世界でもそうだと思うんですが。でも今回はそこに余裕が出てきたというか、のめり込みながらも、ぎゅっと詰まった世界の中からも、広いところに目を向けられるようになってきたという感じです。わかりづらいかな(笑)。今日のライブを見ても女性のお客さんも増えてきたし、違和感なく聞いてもらえるアルバムになるんじゃないですかね。

■変化する音楽シーンとクラブ文化の中で

――音楽活動の中で時代の変化を感じることはありますか。

HUNGER 今は音楽CDが売れない時代になっていますよね。その音楽CDが「まだぜんぜん大丈夫じゃん」っていうくらい、もっとアナログの文化は衰退してしまっている。そんな中で僕たちはアナログが好きで、アナログでライブをやっているので、そういう価値は逆に上がってきているような気がします。これは寂しい話でもあるんですが、そういう珍しい立ち位置になってきたなというのが、時代の流れを一番感じることですね。

――仙台のヒップホップ、クラブカルチャーの現状については。

HUNGER まだやっぱり「怖い」って思われているのはありますよ。お客さんからもいまだに聞きますし。「俺たちなのに怖いんだ?」みたいな(笑)。けっこう根深いというか、クラブ文化というものに対するイメージはやっぱりまだまだ…。

Mu-R なかなか「もう一歩」が踏み出せない人が多いみたいで、そこをどう誘導しようか、そこをどうクリアするか、ということをずっと考えています。

HUNGER そのちょっと拒んでいるような雰囲気というのが、いつも来てくれるお客さんにとっては「現実」から「非現実」への入り口になっているような面もあると思うんですよね。そういう意味では、そういった入りづらさも含めて僕は好きではあるんですけど。

Mu-R 昔はそういうのに憧れてっていうのがあったと思うんです。でも、今は若い子が入れなくなっちゃったじゃないですか。若い子が憧れる場じゃなくなっているというのが大きいと思うんですよね。昔は憧れて足を踏み入れて、それでウチらみたいなのも出てきたし。

HUNGER 今日もクラブに入ったことがないっていう人が10人ぐらい来てくれたけど、こういうインストアとか明るい時間帯のライブとかで、普段はGAGLEのライブを見に来ない人たちが通りがかりでも俺たちのライブを見てくれればいいなと思う。たまたま立ち止まって聞いてくれた人を、そっちの世界へ連れていくことができるかもしれない。そういうライブができていると思うから。

――今回のアルバムもその入り口の1つになりそうですね。

HUNGER そうですね。ヒップホップって限られた人たちだけが聴いているような時代もあったけど、今はほかのジャンルの人たちも聴いてくれるようになりましたよね。そんな人たちが今回のアルバムがきっかけでGAGLEに興味を持ってくれたらうれしいし、そういう人たちの間にクラブへの憧れや興味が無理なく少しずつ広がっていってくれればいいなと思います。

SLOW BUT STEADY
GAGLE

発売日:9月16日
価格:2,625円
発売元:ポニーキャニオン

GAGLE OFFICIAL WEBSITE

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