加美町の「今野醸造」が製造する本醸造濃口しょうゆ「吟醸」が10月1日、「第53回全国醤油(しょうゆ)品評会」で最高賞となる農林水産大臣賞を受賞した。
日本醤油協会が主催する同品評会には全国から307点が出品され、東京・ロイヤルパークホテルで同日開かれた「醤油の日の集い」で受賞者の発表、表彰を行った。同商品の農林水産大臣賞受賞は2年連続8度目で、今野醸造としては通算9度目。同社によると、蔵元として全国単独最多の受賞回数という。
1903(明治36)年創業の同社で「吟醸」が生まれたのは約30年前。当時、しょうゆがスーパーで水よりも安く販売される中、社長の今野昭夫さんがしょうゆ製造を続けるべきか悩み、「どうせなら、最後に自分が心からおいしいと思えるしょうゆを造りたい」と仕込んだのが始まりという。2004(平成16)年に初めて農林水産大臣賞を受賞した。
同社が「吟醸」で目指すのは、さえた赤み、華やかな香り、塩角(しおかど=舌を直接刺激する塩味)のないまろやかなうまみが調和した「きれいなしょうゆ」。中でも重視する工程が、加熱して香りや味わいを整える「火入れ」で、専用の小釜を使い、職人が温度や時間、対流の状態を確かめながら仕上げる。火入れ後も香りや味わいが変化するため、数週間後の状態まで見越して仕上がりを判断するという。
今野さんは「品評会のために特別なしょうゆを仕込むこともなく、出品しているのは、普段お客さまにお届けしている製造ロットの中から選んだもの。特別な一本が評価されたのではなく、私たちが日々のものづくりそのものを評価していただいた結果だと受け止めている」と話す。
同社では7月、農作業場および製品倉庫が全焼する火災が発生した。地域をはじめ多くの人から励ましや応援が寄せられたといい、「多くの方々に支えられてしょうゆ造りを続けていることを実感している」とも。「これからも受賞を目的にするのではなく、目の前のお客さまにおいしいと思ってもらえること、そして料理や素材をよりおいしく引き立てる『きれいなしょうゆ』を造り続けること。その積み重ねに、これまでと変わらず全力で取り組んでいきたい」と意気込む。
宮城県からは川敬醸造(涌谷町)の本醸造濃口しょうゆ「マイルド 特級」も農林水産大臣賞に選ばれた。