発表のポイント
- NanoFrontier・日東紡・東北大学の三者で「ナノ材料でイノベーションを加速する共創研究所」を設置し、ナノ材料の新規作製プロセス/材料設計から事業化までを一体的に推進します。
- クロスアポイントメント(注1)等により企業人材を特任教員として参画させ、部局横断の常設共創プラットフォームで迅速な研究推進を実現します。
概要
東北大学、NanoFrontier株式会社(注2)(以下、NanoFrontier)および日東紡績株式会社(注3)(以下、日東紡)は共同で、2025年11月、「ナノ材料でイノベーションを加速する共創研究所」を設置しました。
本共創研究所は、ナノ材料の新規作製プロセス・材料設計、製品・用途開発、人材育成を一体運用する常設の共創拠点として、東北大学・スタートアップ・大企業との連携を強化します。研究からPoC(概念実証)、技術移転まで一体運用するルートを常設化し、特定有害物質の検出技術などの重点アプリケーションの社会実装を加速させるとともに、企業人材との交流によるテーマ創出力と実装速度の向上を目指します。

(前列左から)NanoFrontier:井上CEO、東北大学:遠山理事、冨永総長、日東紡:辻取締役代表執行役会長、中村執行役技術開発本部長(東北大学特任教授(客員)兼務)/ (後列左から)NanoFrontier:斎藤技監(東北大学特任准教授(運営)兼務)、東北大学:芳野助教、笠井教授、福山多元研所長、岡准教授、日東紡:五十嵐上席技術統括SV、川西技術開発本部管理部長(東北大学特任教授(研究)兼務)
研究の背景
ナノ材料は、環境モニタリング、次世代蓄電池、熱マネジメント、水素エネルギー、ドラッグデリバリーなど横断分野で基盤技術として重要性が高まっています。一方で、産学連携は個別テーマごとの共同研究に分散しがちで、契約・手続の重複や人材・知見の継続的往還の不足が、探索研究からPoC、事業化までのスピードを阻む要因となっていました。
こうした課題に対し、本学内に常設の共創プラットフォームを設け、企業人材が特任教員等として参画できる枠組み(出向・クロスアポイントメント)を整えることで、複数部局・複数教員との協働を平時から可能にし、横断チームでの迅速な研究推進を図ります。これにより、テーマ追加のたびに個別契約を積み上げる負担を抑え、企画・検証・社会実装の三位一体運用を目指します。
あわせて、日東紡は、電子材料事業(スペシャルガラス)、メディカル事業(体外診断用医薬品)、複合材事業、資材・ケミカル事業、断熱材事業の5つの事業を展開しており、素材・検査薬の研究開発基盤を活かして、本共創研究所における材料設計・評価・量産設計の高度化に貢献します。
技術面では、参画するNanoFrontierの独自のナノ材料連続精製技術を活用します。同技術はナノ粒子径の精密制御とスケーラブル生産を可能にし、特定有害物質の現場即時検出などへの応用展開を進めています。
今後の展開
大学、大学発スタートアップ、大企業が共創する研究所をハブとして、研究からPoC、さらに受託製造や技術移転までを一体的に運用できる相談・実装ルートを常設化します。
特定有害物質の現場即時検出を可能にする有機ナノ粒子の社会実装を加速し、まずは環境計測分野から順次横展開を進めます。
産学連携と人材の高度化を図るため、企業人材を特任教員として出向やクロスアポイントメントで配置し、部局横断の支援チームによってテーマ創出力と実装速度を同時に強化します。
学術界や産業界との接点を広げるため、展示会やピッチイベントなどでの発表や共同募集を継続的に実施し、発信力とネットワーキングを強化します。
