東北大の3つの卓越大学院の学生が「災害に備えたコミュニケーションを考える」をテーマに共同で取り組んだ「卓越解拓(かいたく)プロジェクト」の成果発表会が4月12日、東北大青葉山キャンパス復興教育研究未来館で開かれた。
「皆さんの研究活動の今後にもつながったと思う」と参加者にメッセージを送る伊沢さん
卓越大学院は、卓越した博士人材を育成するとともに、人材育成・交流と新たな共同研究の創出が持続的に展開される卓越した拠点を形成する取り組みを推進する文部科学省の事業。5年一貫の博士課程学位プログラムで、東北大では「未来型医療創造卓越大学院」「人工知能エレクトロニクス卓越大学院」「変動地球共生学卓越大学院」が採択されている。
学生はそれぞれのプログラムで各分野のスペシャリストを目指して学んでいるが、「自分の研究だけではなく知識や視野を広げようと思うきっかけになれば」と、未来型医療創造卓越大学院の南理央さんが発起人となって初の合同プロジェクトを企画。各プログラムの有志が、テーマ設定、事前セミナーの講演依頼、この日の成果発表会まで運営の全てを行った。
東北大グリーン未来創造機構特任准教授(客員)に昨年10月就任したQuizKnockのCEO(最高経営責任者)で、東大卒の「クイズ王」として知られる伊沢拓司さんも企画段階から参加した。「森羅万象幅広くいろんなことを知っている伊沢さんの活躍を見て視野が広がった」という南さんのアプローチがきっかけ。伊沢さんは「それぞれの専門分野では当然、皆さんよりも知識はないが、このプログラムは社会とつながる、視野を広げることがポイントになっているので、私が社会やメディアで経験したことを一つ変数として加えることで、学生の中からソリューション(解決策)が生まれればと思い引き受けた」と話す。
参加した学生はテーマに沿った新規事業の立案に取り組んだ。3月の事前セミナーで災害やコミュニケーションについて学びを深めた後、4つのグループに分かれ、約3週間にわたりグループワークを実施。アイデアを膨らませ、伊沢さんからも随時、社会実装のために必要な視点での助言を受け、具体的なビジネスプランに落とし込んでいった。
各グループの提案内容は「防災対策を強化するための留学生特化型講義」「率先避難者の育成に特化した防災教育アプリの開発」「災害一目で丸わかり!物件紹介パンフレット」「いっしょに行こうよ~ペット同伴避難支援から」。成果発表会ではそれぞれのプレゼンテーションに対して、伊沢さんと各卓越大学院の教授が講評を行った。鋭い質問や指摘も飛ぶ中、学生たちは懸命に受け答えした。
閉会式で伊沢さんは自身の経験も交えながら、「社会実装できるような新規事業立案というのは非常にハードルが高い。皆さんが今日質問攻めに遭ったのは、質問するに足る内容になったということ」とねぎらった。「その難しさを体感した上で得たものもたくさんあると思う」とも。
参加した学生は文系理系問わず、学部、研究分野もそれぞれ異なる。南さんは「コロナ禍で授業がオンラインになって学生同士が話す機会も減ってしまっていたが、今まで関わる機会がなかったような分野の学生と交流したことでも、また視野が広がったのでは」と期待を寄せる。