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宮城大の広報ツールが「グッドデザイン賞」受賞 4年にわたる取り組みに評価

グッドデザインを受賞した宮城大の広報ツール(写真提供=宮城大学)

グッドデザインを受賞した宮城大の広報ツール(写真提供=宮城大学)

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 宮城大学(大和町)のウェブサイトやパンフレットなどの広報ツール一式が「宮城大学広報ツールのトータルデザイン」として「2021年度グッドデザイン賞」を受賞した。

デザインチームのメンバー

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 グッドデザイン賞は日本デザイン振興会が主催する事業で、1957(昭和32)年に通商産業省(当時)が創設した「グッドデザイン商品選定制度(Gマーク制度)」が前身。有形無形問わず「人が何らかの理想や目的を果たすために築いた物事」をデザインと捉え、その質を評価・顕彰する「日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組み」として60年以上続き、これまでの授賞件数は5万件を超える。10月20日に発表された本年度の授賞件数は過去最多の1608件で、うち宮城県では10件が受賞した。

 大学の広報ツール全体での受賞は国内初。宮城大は2018(平成30)年度から広報ツールのリニューアルに取り組んできた。背景について、宮城大事務局企画・入試課の中木亨さんは「高等教育無償化制度が始まり公立大学の学費メリットがなくなり、かつ少子化していく社会の中で、大学は本来持っている独自の魅力で志願者を獲得していく必要がある。選ばれない大学は近い将来、成立しなくなってしまうという危機感があり、いち早く大学広報の再構築に着手する経営判断をした」と話す。「地域の大学が持てる強みを生かし、機能できれば、それが一番の地域貢献になるのではないかと考えた」とも。

 多くのステークホルダーがあり、教職員個々の思いがある一方で人員や予算、時間が限られ、結果的にばらばらになりがちだった広報物を統一的にデザイン可能とする仕組みを目指した。体制や発注体系を見直し、長期的、包括的に同じデザインチームで広報ツールの制作に取り組める環境を整備。学内の多くのスタッフ・所管と対話を繰り返した上で、さまざまな分野の考え方を包括し、大学の魅力や社会に向けるメッセージを端的にアウトプットするデザインのガイドラインを構築し、全てのツールに展開した。

 中木さんによると、「慣習的に記載しなければならない」「古い情報を捨てられず情報の整合が取れなくなる」「経緯の説明が長く本論が見えない」といった公的機関のウェブサイトなどに見られる問題点を解消するため、特に情報の取捨選択には強い意志を持って取り組んでいるという。そのほか、「デザインスクールの発行物としてふさわしいクオリティーを長期的に維持すること」「大学の学びや気付き、プロジェクトの魅力を教職員自身がまずしっかりとつかみ、分野外の方にも伝わるように届けること」を意識する。

 グッドデザイン賞の審査委員からは「複雑な組織から成り、異なる多くの人が管理者として関わり、たくさんの情報を発信していく大学で、ツール全体のデザインを統一させることはとても大変な労力だったと思う。それに挑んだ試みが大変素晴らしい」という評価があった。「課題を明確にして、事業のスクラップや統合、体制の再構築から取り組み、規模とリソースに適した運用を検討しデザインプロジェクトに展開していくという一連のプロセスはとてもチャレンジングであり、事業構想的で宮城大学らしいアプローチでもある。このチャレンジそのものを評価いただけたことをうれしく思う」と中木さん。

 「今回のプロジェクトは『本当はこうだったんじゃないか』という大学広報の基本的な形であって、それを少ない人員と予算で実現できたことは、同じ状況に苦しむ公立大学職員の手助けになると思う。宮城大学が持っている面白さを知り、信頼いただくためのきっかけになり、地域の大学の盛り上がりにもつながれば」と期待を寄せる。

 デザインチームのメンバーは次の通り。プロデューサー=中田千彦さん(事業構想学群教授)、ディレクター=高山純人さん(同群講師)、中村聡さん(食産業学群教授)、デザイナー=中木亨さん(事務局企画・入試課、以上宮城大)、多田直歳さん、小林康さん(以上フロット)、松田健一さん(ブレインパワード)、渡辺然さん、布施果歩さん(以上ストロボライト)。

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