NHK仙台拠点放送局制作の地域ドラマ「ペペロンチーノ」のロケが12月3日、始まった。
来年3月で東日本大震災から10年の節目を迎えることから、被災者が抱く10年間の心の葛藤や復興への歩みを描いた同ドラマ。脚本は、映画「私をスキーに連れてって」「木村家の人びと」「病院へ行こう」「彼女が水着にきがえたら」などを手掛けた一色伸幸さんが務める。
宮城県牡鹿半島の海を望むイタリアンレストラン「paradiso(パラディーゾ)」を営むオーナーシェフ・小野寺潔。津波で流された店を再建し震災から10年となる2021年3月11日、友人を店に招き特別な思いを込めた宴を開く、というストーリー。苦難があっても前向きに人生を送れるかもしれない、という思いになれる群像劇を描くという。
4日はロケ地の大郷町で行われた取材会で、小野寺潔役の草なぎ剛さん(なぎは弓へんに剪)は「実際に起きた災害のことなので、今になっても悲しみが癒えていない方はたくさんいる。被災された方の傷、気持ちがどういうものなのかと考えると、どういうふうに演じたらいいのかというプレッシャーになったりもするので、頑張らないとなと思う」と明かした。「被災された方の気持ちに寄り添えるような役になれば」とも。
吉田羊さんは「震災後初めて被災地に足を運ばせていただいたが、来るまでに10年かかったという申し訳なさもあり、少し緊張している。実際の仮設住宅の様子や、現地に来なければ分からなかったことはたくさんあって、そうした景色が今回の物語やキャラクターにリアリティーを持たせてくれるだろうなと感じている」と話す。「このドラマは悲しみや苦しみを乗り越えてきた人々がいて、なお頑張り続けているというポジティブな面を描こうという気持ちを感じた。そのポジティブな気持ちを表現できたら」とも。
制作統括を務めるNHK仙台放送局チーフプロデューサーの青木一徳さんは「時間がたつにつれて、前に進んでいる人、家族を失いそのまま止まっている人、前に進んでいるけれど悲しみを引きずったままもがいている人など、さまざまな境遇の人がいる。その事実をニュースやドキュメンタリーでは届きづらい層に伝えられるような、さまざまな境遇の被災者の人の背中をそっと押せるようなドラマを作りたいと思った。コロナ禍という大変な時期に少しでも前向きな気持ちになれるようなドラマにしたい」と意気込む。
撮影は今後、女川町、牡鹿半島(石巻市)でも行う。2021年3月、BS-プレミアム・BS4Kで放送を予定する。