仙台市内の書店などで11月1日に発売された2008年カレンダー「昭和30年代の仙台」が人気を集めている。発行元はフリーペーパー「風の時」や写真集「絵葉書で綴る大正・昭和前期の仙臺」など、仙台の歴史と風景をテーマにした発行物を手がける出版・制作会社、イーピー(仙台市宮城野区榴岡3)。
読者からの要望で「昭和30年代の仙台」をテーマにした商品を考えていた同社に、古くから趣味で写真を撮り続けている仙台市在住の阿部幹夫さんが1,200枚にも上るネガフィルムを贈呈。「夜や雨、雪という一般的に撮影条件が悪い風景が多いことが特長で、それがかえって詩情的に見る人々の心にしみ込む作風」(同社)の阿部さんの写真を、「ほかの紙媒体よりも写真を大きく掲載でき、1年間通して楽しめること」からカレンダーに起用した。
初版で500部を制作したが、1店舗あたり50~100冊という「カレンダーとしては異例の売れ行き」で発売からわずか1週間で書店の在庫が少なくなり、500部の増刷を決定した。増刷分の発売日は11月20日。価格は1,200円。
同社の佐藤正実社長は「カレンダー発売と偶然重なって封切りになった『三丁目の夕日』の影響もあるかもしれないが、各世代に共通している『昭和30年代』に対する純粋な憧れがヒットの原因では」と分析。「初めて阿部幹夫さんの写真を見たときのドキドキ感を、多くの皆さんと共有できることを非常にうれしく思っている。わずか50年という時間で大きく変貌した仙台の街並みを単に懐かしむだけではなく、壁に貼られたカレンダーを通して父母や祖父母、 近所の人々、上司部下と世代を越えた会話がなされれば」とも。
同社ではまた、仙台市歴史民俗資料館と共同で、市民が所有する写真や8ミリフィルムの募集を開始。佐藤社長は「個人所有のアルバムに入り込んだ『いずれは廃棄品』のものを、なんとか『価値ある資料』へと昇華させたい。市民が保存していたアルバムの写真だけで、1つの写真集を作ることができるほど充実した内容の写真点数が集まれば」と期待を寄せている。
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