仙台の雑居ビルに多彩なジャンルのクリエーターが入居し、注目を集めている。
同ビルは仙台市宮城野区にある築38年の「熊谷ビル」(仙台市宮城野区原町5)。2005年にビルのオーナーから紹介を受けた仙台の銅版画家・霜山直良さんが空き部屋にアトリエを制作。その後、約1年間の間に建築家や造形作家などが次々と入居し、現在は9部屋がクリエーターの制作現場として利用されている。
それまで住居用、事務所用に使われていた各部屋はオーナーの許可により、作家それぞれが自由に改修。内装をコンクリートやペンキで塗り固めたり、廃材を敷き詰めたりと、各作家の個性を打ち出したスペースが完成し、多彩なアトリエと一般住居が混在するユニークな建物となった。
多数の作家に同ビルの存在を広め、アトリエ制作にも携わった建築家・曽根健一朗さんは「『クリエーターのための場所』を意図的に作ろうと思って始めたものではないことが、逆に個々の自立したクリエーターにとって興味をひくものとなったのではないか」と話す。「イギリスの『パブ』のように、ジャンルの異なるクリエーター同士が廊下やアトリエで話をしながら、新たなアイデアを創出する場になっていけば」とも。
こうした動きを知り、24日には仙台市産業振興課の職員が同ビルを視察。同課の大浦健志係長は「築年数の長いもので、入居者が個々に従来以上の自由度で内装を変えられるという点と、クリエーターが自然に集まるという点で画期的な事例。創造的産業の集積を高めるための課題の一つと考えている『クリエーター層が交流できる場づくり』の検討にあたって、大変参考になった」と話した。