登米市長へ研究結果の報告をした際に撮影。左から、研究チームメンバー 杉山賢明氏、やまと在宅診療所 院長 佐藤和輝、登米市市長 熊谷盛廣氏、やまと在宅診療所 事務長 遠藤真美
医療法人社団やまとは、東北大学大学院歯学研究科 坪谷透 非常勤講師、やまと理事長の田上佑輔らの研究チームが、宮城県登米市において、訪問診療クリニックの導入が当該地域における救急搬送の件数を減少させたことを示す研究結果を得たことを発表いたします。
本研究は、「A Home-Visiting Clinic Decreased the Emergency Transportation in Rural Japan: A Quasi-Experimental Approach」として、国際学術誌『Tohoku Journal of Experimental Medicine』に2024年8月29日に受理され、受理原稿がインターネット上に早期公開されております。
▼医療法人社団やまとホームページ
https://yamatoclinic.org/
▼本研究について(一般社団法人みんなの健康らぼホームページより)
https://minlabo.net/2024/12/17/tomeresearch/
発表のポイント
訪問診療クリニックが導入された地方都市において、当該地域の救急車による搬送件数が減少したことを確認しました。
訪問診療を受ける患者は自宅で必要な医療を受けられ、病院への緊急搬送が減少したと推測されます。
本研究は、訪問診療が患者の生活の質を向上させるだけでなく、地域の医療資源の適正配置および持続可能性の向上にも寄与することを示唆しています。
概要
本研究は、宮城県登米市(人口約8万人、高齢化率35.5%)を対象に、訪問診療クリニックの導入が緊急搬送件数に与える影響を検証したものです。日本各地と同様に登米市でも救急搬送件数が年々増加し社会課題となっています。登米市では、2013年に地域初の訪問診療クリニック「やまと在宅診療所 登米」が設立された後、登米市の緊急搬送件数は減少傾向に転じ、その減少は特に高齢者において顕著でした。
訪問診療は、医療機関にアクセスが困難な患者に対し、計画的な診療と緊急の医療対応を提供することで、人々が自宅(高齢者施設などを含む)で医療を受けながら快適に生活を継続することをサポートするサービスです。訪問診療により、人々が自宅で良い医療ケアを受けることができるだけではなく、現在日本各地で社会課題となっている、増加を続ける高齢者の救急搬送への有効な対応策の1つとなる可能性があります。
今後の展望
本研究は、1つの地方都市における訪問診療の効果を実証するものであり、全国的に在宅医療を拡充する意義を強調しています。また、研究者らは、遠隔医療を併用することでさらに効果的で持続可能な地域包括ケア体制が構築できるとも述べています。
文献情報
Tohoku J Exp Med. 2024 Aug 29. doi: 10.1620/tjem.2024.J080. Online ahead of print.
A Home-Visiting Clinic Decreased the Emergency Transportation in Rural Japan: A Quasi-Experimental Approach
Authors: Takaaki Ikeda, Kemmyo Sugiyama, Yusuke Tanoue, Toru Tsuboya
PMID: 39198145 DOI: 10.1620/tjem.2024.J080
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39198145/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjem/advpub/0/advpub_2024.J080/_article
*本研究論文は、出版社受理原稿がインターネット上に早期公開されております