
山元町の旧坂元中にクラフトビール醸造所「Falò Brewing(ファロブルーイング)」が完成し、9月13日に関係者向け内覧会が開かれた。
設立したのは山形市出身の半田成さん。酒類・食品卸売会社、クラフトビール輸入会社を経て「うしとらブルワリー」(栃木県)、「CRAFTROCK BREWING」(東京都)で醸造を担当し、オーストラリアの「Sailor's Grave Brewing」で醸造長を務めた。2023年に帰国後、国内の小規模醸造所向けに技術指導を行いながら物件を探す中、旧坂元中を紹介されたことを機に2024年4月、山元町の地域おこし協力隊に就任し、開設準備を進めてきた。「Falò」はイタリア語でたき火を意味し、人々が集まり、語らい、楽しむ場になればという思いを込めた。
校舎の給食室を醸造所として、麦汁を作る設備や1000リットル2基、500リットル4基の発酵タンクを設置。総事業費は約4,000万円で、一部をクラウドファンディングで賄った。現在は酒類製造免許の交付を待ちながら、年内の出荷を目標に最終段階に入っている。年間では3万リットルの出荷を目指す。
ホップの香りと苦みが特徴のウエストコーストIPAと、ライトですっきりとしたタイプのビールを2本柱に、「これまでの経験で教わってきたことがたくさんあるので、それらを取り入れながら、スタイルにとらわれずさまざまなビールを造っていきたい」と半田さん。「ハレの日にというよりは、日常にあって、また飲みたいなと思ってもらえるビールを提供していければ」と意気込む。副原料に町の特産物を取り入れ、地元の再発見や地域のPRにつなげることも考えている。
町では新たなビジネスの創出や雇用拡大、地域経済の活性化を図り、2021年に閉校した旧坂元中を起業家や新規事業者のための拠点(インキュベーション施設)として貸し出し、同醸造所のほか焼き菓子の工房・カフェ、体操施設の開業準備が進んでいる。事業者同士でミーティングを重ねて施設の今後について構想し、ファロブルーイングでも直売所やタップルーム(飲食スペース)の開設を予定。半田さんは「施設としてもどんどん面白くなっていくので楽しみにしてほしい」と話す。
内覧会に出席した橋元伸一町長は「若い人たちの発想と行動力で町を活性化させていきたいと、地域おこし協力隊の方たちにまちづくりに協力してもらっている。半田さんの応募内容を見て本当に夢がある計画だなと思い、行政に頼るのではなく自分の力で何とか一生懸命やっていくという思いも伝わってきて、私たちの町の夢としても託してみようと思った」と振り返る。「地域おこし協力隊は3年という短い期間だが、その3年間で将来の下地をつくって、その先5年、10年、20年とまちづくりに協力いただければ」と期待を寄せる。