提供:Rethink Creator PROJECT 制作:仙台経済新聞編集部
仙台・宮城の人たちに広く知られる福の神・仙台四郎さんの写真に、「笑えない日があってもいいんでねが。」のコピー。ふっと心が楽になり、四郎さんを知らない県外の人もこの笑顔に会いに来たくなる。そんなポスターが、「クリエイターの地産地消」を目指す「Rethink Creator PROJECT(リシンククリエイタープロジェクト)」のセミナーで完成しました。
「Rethink Creator PROJECT」は、身近な物事について少しだけ視点を変えて考え、それを形にして世の中に発信できる人財=「Rethink Creator」を日本中に生み出していくプロジェクト。「クリエイターが働きやすい世界の創造」をビジョンに掲げ制作・開発・教育事業を手掛けるクリエイターズマッチ(東京都千代田区)が主催し、JTによる地域社会の課題解決を目指すプロジェクト「Rethink PROJECT」とのコラボレーションで展開しています。
デザイナーやコピーライター、カメラマンなどプロのクリエイターでなくても、地域の魅力を一番よく知っている地元の人たちがクリエイティブに興味を持ち、全国へ発信することで地域をもっと豊かにしていこう。そうした考えの下、2018年から全国各地での無料セミナーとオンライン講座で「学びの場」を提供するとともに、「挑戦の場」として誰でも参加できるコンテストを開いています。昨年の無料セミナーは28地域で34回開かれ、約1300人が参加。プロジェクトへの登録者数は5200人を超えました。
5回目となる仙台でのセミナーが仙台市の後援を得て8月21日、仙台駅前ソララプラザ3階の「SPACES仙台」で開かれました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国的にイベントが相次いで中止される中でしたが、「世の中がコロナ禍でネガティブな空気になっている時だからこそ、自分たちが暮らす地域のいいところをみんなで再発見して、地域にもっと誇りに思っていただくことで元気になってもらいたい。開催中止という選択は考えませんでした」とクリエイターズマッチCreator Platform事業部教育部部長の樋口淳さんは話します。
クリエイターズマッチの樋口さん
安全に実施できる方法を探る中で、会場での開催が急にできなくなっても対応できるようにと、リアルとオンラインのハイブリッド開催を選択。当日は会場で12人、オンラインで30人が参加しました。会場は席を離してソーシャルディスタンスを確保。入場時の検温や手指消毒、マスク着用など感染対策も十分に行われました。
クリエイターだけでなくデザイン初心者や未経験者が多数参加するのが「Rethink Creator PROJECT」セミナーの特徴。今回も参加者のほぼ半数はデザイン未経験で、20~40代の会社員が中心でした。
講師はフリーランスのクリエイターでプロジェクトリーダーの羽室吉隆さんと、仙台を中心に活動するフリーランスデザイナーの大久僚一さんが務めます。
羽室さん
大久さん
クリエイターの地産地消を掲げるプロジェクトだけに、地元のクリエイターが講師を務めるのも特色です。大久さんは26歳の時に異業種から転職してデザイナーになった経歴の持ち主で、「デザインを学ぶことやクリエイティブを考えることに時期は関係ありません」と実感を込めて伝えます。
セミナーは30分の講座と1時間30分のワークショップで構成。講座では、「Rethink=視点を変えて考える」ためのINSIGHT(インサイト)、FILTER(フィルター)、CAPTA(カプタ)という3つの方法が紹介されました。
「インサイト」は「伝える相手をイメージして、身近なものを内側から見る」こと。伊達政宗公や牛たんなど仙台を外側から見たありふれた情報を不特定多数に届けるのではなく、外からは見えない内側から、特定の「誰か」に届けることを意識します。
「フィルター」は身の回りにあるものを「属性」に注目して見るということ。分かりやすい例として、「黒色のもの」という属性に注目して会場の中にあるものを見回してみました。
「カプタ」は「正確でかたい」データで対象を捉えるのではなく「自由でやわらかい」印象で対象を見るということ。やや難解な概念ですが、講師の大久さんをデータとカプタで伝える画像を比べてみると一目瞭然。カプタ情報の方がぐっと親しみやすく身近で、印象にも残ることが分かります。
「伝える相手をイメージして」「属性に注目して」「印象を意識して」身の回りのものを見てみる、という地域の魅力を再発見する手法を教わったところで、休憩を挟んでワークショップへ。地域にまつわるコンテンツの写真を見て、さまざまな視点でRethinkし、キャッチコピーを付けてポスターにしていきます。
用意された素材は「仙台のキャンディー(食べ歩き串グルメ)」と「仙台四郎」の2つ。まずは一人一人が伝えたい相手として、できる限り具体的な人物を想像していきます。
次に、いろいろな属性に注目して写真から情報を収集し、やわらかくて自由なカプタ情報に注目しながらキーワードを書き出していきます。
出そろったキーワードを基に、伝えたい相手に届く、胸に刺さるキャッチコピーを一人一人が考案。これまでのセミナーではグループワークを行っていましたが今回は感染症対策のため、会場からはメモを回収し、オンラインではチャットで出し合い、全員で共有しながら一つに絞り込んでいきます。
決定したキャッチコピーを、羽室さんが会場やチャットの意見を聞きながらリアルタイムでレイアウトしていきます。仙台四郎の写真では「ラーメンを一人で食べに行けちゃう女子」という対象を設定し、「笑えない日があってもいい。」のコピーを採用。
レイアウトしている最中にオンライン参加者がチャットで発した意見を取り入れ、語尾を「いいんでねが。」に変更。増えた文字数に合わせてレイアウトも調整し、より印象に残る仕上がりとなりました。
「スマイルな仙台四郎の写真に対して『笑えない』という言葉のコントラストの強さと方言によるやわらかさが素晴らしい」と羽室さんは高く評価。「笑えない日があってもいい。」を提案した20代女性は「採用されポスターにもしていただけて、とてもうれしかったです。今から素人がデザインなんて無理かな…と思っていましたが、良い意味でハードルが下がりました」とアンケートに喜びのコメントを残しています。
こうしてリアルの場とオンラインの参加者がアイデアを出し合ってポスターが完成。参加者からは「みんなで関わり一つの形になるのがよかった」「自分のアイデアが取り上げられてコメントを頂けるのがうれしかった」といった感想があり、ハイブリッド開催のメリットも感じられました。
JT東北支社リレーション推進部社会環境・CRM推進部課長代理の本臼友美さんは「地元の身近な話題を題材にしているのでとっつきやすく、皆さんいろいろな捉え方があって面白いですね」と、参加者の意見でポスターが完成していく様子を見ていました。「仙台七夕など多くの観光客でにぎわうお祭りが中止になり、全国からなかなか人が来られない分、地域の人が地元の小さな魅力に気付いて全国に向けて発信していただけたらうれしい。そのことでまちに活気が戻れば」と期待を寄せます。
セミナーを終えた大久さんは、初のオンライン同時開催で不安もあったそうですが、「リアルな場所にいなくても皆さん趣旨をよく理解してくださって、リアルの場とアイデアを共有しながらいい作品が作れてよかったです」と、一安心した様子でした。
「例えば伊達政宗を題材にしても、外の人から見える表の部分だけではなく、裏側にあるストーリーや隠れた魅力に気付くことができるのが地域で暮らす私たちの強み。地元の企業やお店、人物について地元の人の視点でデザインしていくような業界になれば」と大久さん。「今日参加した方やこれからクリエイターを目指す方も仙台・宮城のいいものを発信して、一緒に盛り上げていきましょう」と呼び掛けます。
最後に印象的な参加者の声を一つ。「デザインはみんなのもの、誰でもできるものだというメッセージが伝わりました」と20代の女性。それはまさに、プロジェクトが活動を通して届けたい思いです。
そして、「地元にある身近なものを魅力的に伝えたい気持ちになりました」という感想もありました。そんな方にぜひ挑戦してほしいのが「Rethink Creative Contest(リシンククリエイティブコンテスト)」です。自ら撮影した写真と考案したキャッチコピーで地域の魅力を伝える作品を募集。「Rethink PROJECT賞(最優秀賞)」1作品に賞金50万円、「優秀賞」最大30作品にそれぞれ賞金3万円が贈られます。
セミナーを受けていない人も参加可能です。「Rethink Creator PROJECT」のウェブサイトでデザイン講座の無料動画も公開していますので、作品を作る前に視聴してみてください。