「Rethink Creator Project」
制作:仙台経済新聞編集部
地域の魅力をその地域の人が発信することで、さらに地域を豊かに――。「クリエイティブの地産地消」を目指す「Rethink Creator Project(リシンククリエイタープロジェクト)」の一環として3月24日、無料セミナーが仙台駅前「アエル」(仙台市青葉区中央1)26階の「デジタルハリウッドSTUDIO仙台」で開かれました。
「Rethink Creator Project」は、視点を変えて考え、それを形にして世の中に発信できる人財=「Rethink Creator」を日本中に生み出していこうというプロジェクト。「クリエイターが働きやすい世界の創造」をビジョンに掲げ制作・開発・教育事業を手掛けるクリエイターズマッチ(東京都渋谷区)が主催し、JT(港区)が2018年から展開する「JT Rethink Project」とのコラボレーションで行っています。
経験の浅いデザイナーやコピーライターのみならず、クリエイティブに少しでも興味のある人を対象にしているのが特徴。全国各地のセミナーとオンライン講座で「学びの場」を提供するとともに、誰でも参加できるコンテストで「挑戦の場」を設け、初めの一歩だけでなく継続して制作やスキル向上に取り組めるように動機付けをしています。プロジェクトへの登録人数は2019年4月現在、2900人を超えています。
地域セミナーは昨年9カ所で行い、2年目となる今年は24カ所に規模を拡大。3月9日の神戸、16日の福岡に次いで仙台が3会場目となりました。クリエイティブによる地域活性に継続して取り組んでいる仙台市との共催で行われました。
今回は当初の定員を超える43人が参加し、ぎっしりと椅子が並べられた会場に続々と参加者が訪れました。参加者の男女比はほぼ半々。デザインの仕事をしたことがない人の方が多く、デザインソフトを使ったことのない人が4割と、ほかのクリエイティブ系セミナーとの特色の違いが表れています。地元テレビ局の取材も入り、プロジェクトへの関心の高さも感じられました。
全員が着席した後、主催者からプロジェクトの概要とそこに込めた思いが語られ、いよいよセミナーがスタート。講師はプロジェクト代表のクリエイターズマッチ羽室吉隆さんと、仙台を中心に活動するフリーランスデザイナー大久僚一さん。クリエイティブの地産地消を掲げるプロジェクトだけに、地域セミナーでは地元のクリエイターが共に講師を務めます。
大久さんは26歳の時に異業種から転職してデザイナーになった経歴の持ち主。「デザインを学ぶことやクリエイティブを考えることに時期は関係ないと思います」と実感を込めて参加者に呼び掛けていました。
初めは、タイトルにもなっている重要なキーワード「Rethink」=「視点を変えて考える」ことについてのレクチャーから。視点を変える3つの方法としてINSIGHT(インサイト=内側を見る)、FILTER(フィルター=属性を見る)、CAPTA(カプタ=印象を見る)が紹介され、漠然とではなく「伝える相手をイメージして」「属性に注目して」「印象を意識して」身の回りのものを見てみるという地域の魅力を探す具体的な方法を教わりました。
視点を変える方法を教わったところで、ワークショップに移ります。「仙台」にまつわるコンテンツをさまざまな視点からRethinkし、写真にキャッチコピーを付けて作品にするところまでが課題です。用意されたコンテンツは「仙台七夕」「仙台朝市」「ずんだ餅」「せり鍋」「国分町」「仙台四郎」の6つ。いずれも地元の人たちにとっては身近なもので、目新しさはありません。だからこそ、Rethinkが必要となってきます。
参加者を6つのグループに分けて、グループごとに異なる1つのコンテンツに挑戦。まずは一人一人が伝えたい相手を明確に設定し、その上で写真からキーワードとなる言葉を連想していきます。それぞれがキーワードを書き出したところでグループワークを行ってキーワードを出し合い、意見交換。参加者たちが向かい合って積極的に意見を交わし、会場内は一気ににぎやかに。同じ写真を見ているにもかかわらず、人によって多様なキーワードがあることに発見があったようでした。
グループワークで交わした意見も参考にしながら、それぞれがキャッチコピーを考案。その後再びグループワークでチームごとに1案に絞り込みました。キャッチコピーと、書体や配置の希望を聞いて、羽室さんがリアルタイムで素早くレイアウト。「いままでのセミナーの中で一番要求が多かった」と羽室さんが苦笑いするほど参加者のこだわりも見られ、6つの力作が完成。出来上がった作品を投影して順に発表し、講師が講評していきました。
出来上がった6作品は、地元の大久さんも「この視点はなかった」と感心する秀作ぞろい。羽室さんは「いい風景を写真に切り取って、そこに良いコピーを載せたらクリエイティブになりました。デザインはしっかりやろうとすればもちろん難しいですが、こうして誰でもできるものでもあります」と話すと、実際に完成までこぎ着けた後だけに、参加者は実感を込めてうなずいていました。「どれも素晴らしくて、素人でもできるんだなと思えました」という参加者の声もありました。
2時間にわたって行われたセミナーは終了。羽室さんは「SNSが代表的なように、いまは一人一人が発信する力を持っている時代。皆さんが身近なコンテンツを発信することで地域の魅力が全国に伝わります。ぜひ気軽にクリエイティブを使ってください」と締めくくりました。
終了後のアンケートで多かったのは「デザインが身近に感じた」という声。参加者の一人は「県外に住んでいる友人に仙台について話す際、どこがどのように良いかをなかなか伝えられなかったのですが、これからは伝えられそうです」と話していました。仙台市産業振興課の佐藤伸洋さんは「クリエイティブの力で新たな地域の魅力が発見・発信されるのが楽しみです」と期待を寄せます。
「まちが元気になっていくためには、ものを作る人たちが増えないといけない」という思いからクリエイターズマッチを起業した代表取締役の呉京樹さん。神戸で生まれ育ち阪神・淡路大震災を経験していることから、仙台での開催にはより強い思いがありました。「クリエイターに教育をしっかり届けることで、最終的に宮城の復興につながるクリエイティブが生まれていけば」と願います。
羽室さんは「それぞれの地域や文化や暮らしに合った発想を、その地域の人たちが生み出して発信していくことが大事。それを続けるには東京から乗り込んで単発のセミナーをするのではなく、地元の人が講師になって続けていくことが必要です」と話します。大久さんと共に行っている仙台でのセミナーは「現地講師が主役という理想の形に近い」と言い、「僕がいなくてもできるように応援していきたいです」と話してくれました。
「JTではこれまで分煙やマナー啓発などたばこの環境を整える活動をしてきましたが、吸わない人のためにたばこそのものをRethinkして、究極にクリーンなたばこを目指して開発しようという思いからプロジェクトが立ち上がりました」と振り返るのはJTたばこ事業本部商品企画部主任の大平崇依さん。「視点を変えて考えることは、たばこに限らず世の中のさまざまな社会課題の解決にもつながるのでは」と期待を込めます。
セミナー参加者が学んだことを生かしてチャレンジできる場も用意されています。それが「Rethink Creative Contest(リシンククリエイティブコンテスト)」。この日の課題と同じように、写真にキャッチコピーを配置した作品を応募するもので、「Rethink Creator賞」と「JT Rethink賞」の2部門を用意。年3回行われます。
現在、次回の応募作品を受け付け中。セミナーを受けていない方も参加可能です。「Rethink Creator Project」のウェブサイトで動画教材が無料で公開されていますので、作品作りの前に視聴してみてください。
「これはクリエイティブのスキルを競うものではなく、アイデアや伝える力を競うコンテストです。地元の魅力を世の中に見せ付けてやるぞという気持ちで応募してください」と羽室さん。過去にはプロジェクトに出合うまでデザインの経験がない方がグランプリを受賞したこともあるそうです。賞に選ばれると東京都内で年末に行われる表彰式への招待も。「全国各地のRethink Creatorが集まり、未来につながる良い出会いがあると思います。たくさんの応募を待っています」
今後のセミナー開催日程について
大阪セミナー
【定員】40名
【日時】4/7(日)14:00~16:00
【会場】OBPアカデミア
【住所】大阪府大阪市中央区城見2丁目1 城見2-1-61 ツイン21 MIDタワー9階
萩セミナー(萩市後援)
【定員】40名
【日時】4/13(土)14:00~16:00
【会場】明倫学舎復元教室
【住所】〒758-0041 山口県萩市江向602
熊本セミナー(熊本市後援)
【定員】50名
【日時】4/16(火)18:30~20:30
【会場】くまもと県民交流館 パレア
【住所】〒860-0808 熊本県熊本市中央区手取本町8-8-9
札幌セミナー
【定員】30名
【日時】4/20(土)13:00~15:00
【会場】デジタルハリウッドSTUDIO札幌
【住所】北海道札幌市中央区南2条西3丁目12-2 トミイビルNo.37