西川株式会社(本社:東京都中央区日本橋 社長:菅野達志 以下、nishikawa)の代表取締役会長CEO 西川八一行が、5月17日(土)東北大学百周年記念会館川内萩ホールで開催された「第 98 回日本産業衛生学会」ランチョンセミナー19に登壇いたしました。「睡眠健康経営」をテーマにしたこのセミナーには、産業医など約400人が詰めかけ、睡眠健康経営についての考察を深めました。
日本産業衛生学会は、産業衛生に関する学術の振興と勤労者の職業起因性疾患の予防及び健康保持増進を図り、社会の発展に寄与することを目的とした国内最大の学術団体です。今回、5月14日(水)から17日(土)の会期で第98回日本産業衛生学会が仙台を舞台に行われ、そのプログラムの一環としてランチョンセミナーが開催されました。
石田陽子氏
座長の浜口伝博氏
セミナーは、座長の浜口伝博氏(産業医科大学 産業衛生教授)が進行を務め、まず公衆衛生の医師である石田陽子氏(株式会社心陽CEO 心陽クリニック院長)が登壇。「眠るほど、ぐんぐん仕事がうまくいく」と題し、株式会社心陽で行っている睡眠マネジメントについての話を中心に、睡眠と企業業績の関係性、睡眠を軸にした健康経営施策の実例紹介などを行いました。
西川 八一行
続いて、西川八一行(西川株式会社 代表取締役会長CEO)が登壇。「睡眠健康経営~産業医と企業の協働による新たな可能性~」を主題に次のような内容の講演を行いました。
nishikawaは約40年前に日本睡眠科学研究所を設立し睡眠研究を続けています。日本睡眠科学研究所では、毎年約1万人を対象に睡眠実態調査を行っており、その結果をもとに、現代の労働環境と睡眠の現状について言及しました。特に、働き盛り世代の睡眠の質が低下している現状や、睡眠不足が生産性や健康に与える影響を具体的なデータで紹介しました。
平均6時間以下の睡眠を2週間続けると、認知機能が2日間連続徹夜をしたのと同程度に低下します。このような睡眠不足が、企業パフォーマンスや職場の健康状態全体にいかに影響するか、多くの研究が示しています。
また、従業員のプライバシーを保ちつつ、企業の健康施策として広がりを見せている「睡眠健康経営」の取り組みが紹介されました。従業員による睡眠データの収集と分析を通じて個々の睡眠改善を支援し、同時に生産性を向上させることで、企業全体の価値を高める仕組みが強調されました。健康経営への取り組みは、禁煙、運動の強制、アルコール制限など楽しみを犠牲にするネガティブなイメージがある中、従業員の方々に受け入れられやすいのが睡眠を通じた健康経営へのアプローチです。
nishikawaでは、企業に向けた「睡眠改善プログラム」を開発し健康経営を支援しています。このプログラムは、Sleep Innovation Platform(SIP)という睡眠コンソーシアムの活動の一環として、アカデミアの専門家からのアドバイスや参加企業からのニーズをもとに開発されました。現在、SIPの参加企業でもある伊藤忠商事株式会社と共同で、本プログラムの効果検証を進めています。伊藤忠商事の従業員の皆さんのご協力のもと、プログラムの有効性を確認したところ、プログラム開始1年目には、任意の従業員736名を対象とした調査で、一部の従業員に睡眠課題、特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)が重症化している可能性が明らかになりました。しかし、この時点では、睡眠に問題があることが分かった従業員の内、、実際に医療機関を受診する人は16%にとどまっていました。そこで、2年目には、この課題を解決するため、年1回のストレスチェックを活用し、プログラムを全社員に拡大。931名を対象にプログラムを実施しました。nishikawaからのアドバイスに基づき、伊藤忠商事の人事・総務部と企業内診療所の医師(産業医)が連携し、適切な検査からその後の治療へとスムーズに移行できるよう、伊藤忠商事社内でサポート体制を整備いただきました。具体的には、検査・診察費の会社補助や社内診療所での問診実施が功を奏し、受診率が大幅に向上しました。結果として、SASの医療用簡易検査を促す案内をした従業員のうち、100名が検査を実施。さらに、検査でSASの重症度が中程度以上だった従業員に対して専門のクリニックへの誘導を行ったところ、約80%が受診するなど、顕著な成果が見られました。
本プログラムは、医療連携に加えて、医療以外の領域でも継続的なサポートを行っており、治療の必要はないものの睡眠の改善が必要な方や、気軽に睡眠相談を受けたい人に対しては、nishikawaの「ねむりの相談所(R)」にて個別のアドバイスを提供しています。
このように、本プログラムを通しては、企業の睡眠課題を顕在化させ、企業と産業医が密に連携して医療連携ルートを設けるきっかけを作るなど、それぞれの企業の課題に合わせたアドバイスやサポートを提供しています。さらに、睡眠コンサルティングサービス「ねむりの相談所(R)」を活用することで、従業員が自身の睡眠の課題に気付き、自らの意志で改善アクションを取ることができる、仕組みが確立されています。
竹林正樹氏
両者の登壇の後、テレビ番組などでもお馴染みの竹林正樹氏(青森大学 客員教授)を交え、会場から寄せられた「睡眠の大切さはわかっているはずなのに、夜更かしする人に対してどんなアプローチがよいのか?」「夜になると悩みごとが頭をぐるぐる回って寝つけない場合はどうすればよいか?」といった質問に対して、それぞれの専門性を活かしたトークを行いました。
ランチョンセミナー終了後、産業医や企業担当者からは「健康経営の次のステップとして、睡眠に焦点を当てる取り組みをぜひ取り上げたい」などの声が多数寄せられました。さらに、参加者からは「産業医と企業の役割の明確化」や「睡眠を基軸としたヘルスケアプログラムの導入における課題と解決策」について具体的な質問も寄せられ、健康経営分野における睡眠の重要性が改めて浮き彫りとなりました。
会長の西川の講演の満足度を参加者にアンケート形式でヒアリングした
ところ、72.2%の参加者が「大変参考になった」 と回答する結果となりまし
た。また、 27.8%が「参考になった」 と評価しており、今回講演に参加した
経営者や医療関係者の多くの方に満足いただきました。
参加者からは以下のような声が寄せられています。
・「睡眠時間の重要性を改めて認識しました」
・「実際に職場で取り入れる方法を考えるきっかけになりました」
・「経営層の理解不足という課題に気づけた」
今回のアンケート結果と参加者の声をもとにして、これからの企業向け施策やツールの導入に繋げていく予定です。