
『AIJ建築年鑑 作品選集2025』掲載ページ
社会福祉法人あいの実の「COCOON西田中EAST」が、作品選集2025と東北建築賞特別賞の二冠達成。
- 一般社団法人日本建築学会(AIJ)『作品選集2025』掲載
- 日本建築学会東北支部主催『第45回東北建築賞?特別賞』受賞
本施設は2023年度グッドデザイン賞も受賞しており、複数年にわたって社会福祉施設としての建築的質が横断的に評価されています。

COCOON西田中EAST。支援・生活・滞在を支える“風景のような場”を、中庭型の平屋で実現しています。
【施主】社会福祉法人あいの実 理事長 乾祐子
【名称】COCOON西田中EAST
【所在地】宮城県仙台市泉区西田中松下23(
地図)
【用途】重症心身障害児者の短期入所施設/生活介護施設等
【設計監理】有限会社都市建築設計集団/UAPP
【構造設計】皆本建築工房 皆本功
【機械設備設計】内外設備設計 高橋十悦
【電気設備設計】アイワ企画事務所 高橋守
【施工】株式会社市村工務店
【構造】木造平屋建(一部2階)1階(667.65平方メートル )2階(59.62平方メートル )
【完成年】2023年

COCOON西田中EAST模型(都市建築設計集団UAPP作成)
都市建築設計集団UAPPが設計・監理を担当し、施設運営を担うあいの実との密な対話を重ねることで、利用者・家族・スタッフそれぞれのリアルなニーズを建築に反映。模型による検討とディスカッションを繰り返しながら、福祉施設設計における「使い手主体の合意形成」を実現しました。
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日本建築学会『作品選集2025』
「障がい児者のための医療的ショートステイと、生活介護を併設した複合施設である。設計者のコンセプトにあるように、機能ごとにまとめられた空間が風除室によってつながれ、機能分化と融合という相反する命題を実現させている。障がい児のためのこうした施設を社会福祉法人が運営する事例は極めて珍しく、建築的な前例がほとんどないということである。そうした中で、運営者、従業員、さらには利用者からのさまざまな希望を紐解き、4つのにわ、4つの出入り口(風除室)を挿入することで機能的要望を解決するとともに、既存の障がい者施設にみられる閉じられた施設というイメージからの脱却に成功している。里山の木々を移植した豊かな緑に包まれた4つのにわに、明るく開いている建築である。現地では、二期工事で増築された小さなカフェが運営され、審査対象の建物とコントラストを生む極小空間が、障がい児の保護者にとって貴重なコミュニティ空間を提供していることも特筆に値する」(作品選集2025掲載ページより)

作品選集2025

地形に沿った配置と中庭の透明性により、外と内の緩やかな境界や、地域環境との親和性を実現
● 第45回東北建築賞「特別賞」
「本計画は、従来医療と児童福祉の社会的な狭間となっていたニーズに対して、医療型児童デイサービスのサテライトを目指したプロジェクトです。仙台市北部の郊外に実現したこの施設は、機能別のゾーニングを踏まえた中庭を囲むシンプルな構成でありながら、外部と内部をつなげる水平方向の開放性や周辺環境とのレベル差、開口部周辺のデザインなどの工夫が随所に見られます。障碍を有する利用者へのケアの空間として、様々な計画的配慮が為されているとともに、同伴する家族の視点と使い方にも注意が払われています。隣接するカフェを計画することによる保護者の送迎時の滞在や就労の場を儲けようとしている点などは新しい試みと言えます。そして、これらの計画の背景には、設計者と運営者との綿密なコミュニケーションにより、汲み取るべきニーズと実際の運営時における課題を設計にフィードバックするプロセスも重要な意味を有しています。以上、今後の医療・福祉社会の一つのモデルとなりうる可能性を感じさせることから、東北建築賞特別賞に値する評価となりました」(東北建築賞ギャラリーページより)
第45回東北建築賞(作品賞4作品、特別賞2作品) - 日本建築学会東北支部

開放的でありながら繊細なゾーニングにより、ケアの現場に求められる“気配の共有”と“距離の確保”が共存
「COCOON西田中EAST」には、「宿泊型支援」「通所型支援」「家族の一時滞在」「地域交流」など多層的な機能が並列しています。中庭、風除室、ウッドデッキ、カフェといった緩衝空間が各機能をつなぎ、閉塞感を排した構成を生み出しています。
また、家族の宿泊も可能な医療的ケア対応施設は国内でも稀有であり、「制度の谷間」に位置づけられる支援ニーズに対し、建築的手法で応えた希少な事例と言えます。

木毛セメント板や開放的な風除室など素材と構成の選定において、福祉施設に求められる清潔性・快適性・心理的安心感が高度に両立
2023年にグッドデザイン賞を受賞した際には、「入院ではなく滞在を」「施設ではなく生活を」という思想が明快に表現されている点が評価されました。今回の二冠は、その延長線上にありつつ、建築業界内部から空間構成・運営モデル・社会性の三軸で再評価を受けた結果です。

透明感あるファサード。正面から見ると奥の建物までが一望できる。
「COCOON西田中EAST」は、機能重視型施設から生活共生型施設へのパラダイムシフトを象徴する事例です。今後、医療的ケア児を対象とした全国各地の施設整備において、空間設計の指標となる可能性が高いと考えています。
本件に関するお問い合わせは、都市建築設計集団UAPPまたは社会福祉法人あいの実 広報部まで。
※報道関係者向けの現地取材・写真提供も対応可能。